非公認! おわら風の盆 買い食いバトルロイヤル
  タイトルを見て「あれ?バトルは中止じゃなかったの?」と思われる方もいらっしゃるだろう。そう、「おわら風の盆買い食いバトルロイヤル」は紛れもなく中止である。
 しかし………やっぱりやった。やってしまった。やっぱりやるような連中が日本にはいたのである。
 一応風雅システムとは無関係、非公認なので、名称も「非公認おわら風の盆買い食いバトルロイヤル」と改め、9月2日にそれは決行された。だがバトルの報告の前に、まずはそこに至るまでの経緯を説明しておこう。
 某月某日のこと。バトルが中止になったことが関連ネットで告知された。この日のために長らく準備してきたというのになんたることか。参加予定であった会員の多くは半年以上も前から会社の休みを申請し、なかなか取れない当日の宿を探したりと、まさに万難を排してこのバトルに臨むわけである。そんな努力をした会員たちが年に1度のオフ会を目指して富山に集うわけであるから、そのテンションたるや想像に難くない。……だが、FUGAクラブからの告知は会員の努力と関係なしに絶対の発言力がある。
 その関連ネットで誰かが言い出した。

 「俺たちだけでやろうか?」

 そういうわけでお祭り人間たちが集まったのである。この情報をFUGAクラブが察知するや否や、企画責任者である当方に断りもなくFUGAクラブ自体までもが非公認バトルの受付窓口となり、情報を掴んだ会員たちのうち、関東から3人、関西から1人、地元も合わせると5人がバトルに集ったのである。素晴らしい連携である。

 では今年の戦士たちを紹介しよう。

No.210 佐藤α (22歳)
 クラブ'内で一世を風靡した「迷彩服は最近はただの作業着と化している。今回のバトルには迷彩服に代わる新兵器が投入されているが、そのあたりは本文を読んでもらいたい。得意技は中華鍋でアスファルトを妙めるというもの。とりあえずハッキリ分かるのは、この紹介では何をやっている人か全然分からないということである。

No.5 廣瀬 Y (22歳)
 寡黙であるが、はるばる関東平野から雨降る高速をバイクでとばしてバトル前日には富山に駆けつけるほどのパワーと勢いを兼ね備えた男である。バトルでそのパワーがいかに発揮されるか見物である。

No.361 佐藤β (21歳)
 去年のバトルでは「しょわないカメラ小僧」と呼ばれていたが、それ以来それが定着してしまった感があり、ちゃっかり本人にもその自覚がある。今回の参加者の中では最年少である。関西ではなく、西日本代表ということにしたい。

No.62 落合 K (23歳)
 いつも土産と賞品を持ってきてくれるナイスガイである。過去3度にわたる参加経験が体格の良さとも相まってかなりのポテンシャルを期待できる。どのような熱いバトルを繰り広げてくれるかが注目である。

No.31 山本 R (22歳)
 V3達成中の王者である。また参加者中、無敵の安芸出を知る唯一の人物。去年までは確か東京にいたはずであるが、現在は富山県民である。どうやらこの日のために引っ越したらしい。バトル前日は二日酔いで1日中ゲロを吐いていたというエピソードもある。

 さて、参加者はこの5人であるが、もう一人紹介する。

小林 もそ (22歳)
 FUGAクラブの会員ではない彼は、山本にたぶらかされてバトルの審判を務めることになったらしい。山本が東京で運用している草の根ネットの会員である。念のためことわりを入れておくが、「もそ」は本名ではない。

 前日から当日にかけて、バトル参加者たちは着々と山本の家に集結しつつあった。このように今年は宿の事情が改善されている。例年は路頭に迷う可能性を秘めていたバトルであるが、今年はその心配がない。それだけでも大きな前進である。
 午後5時、富山駅に全員が揃う。皆の瞳に異様なまでの輝きが見える。『気合充分!』というところか。当然、決戦地に着くまでの間の話題はバトル絡みのものばかりであった。が、集まると嘔吐ネタが多いのは古参会員の特徴といえよう。現地に着いた一行は戦場を歩き、まずはバトルのプランを練る。
王者・山本  祭りの会場はにぎやかであるが、ある交差点で一行は戦慄した。あの婦警様である。そのつぶらな瞳で参加者たちを毎年爆笑、あるいは恐怖のるつぼに突き落としていることは一部で有名な話である。今年は去年より更に塗装が剥げており、いよいよもって熟女である。その昔、婦警様を囲って写真を撮ったこともあるが、いざ出来上がってみるとそれは心霊写真のようであったという。(この「婦警様」とは横断歩道用の黄旗を入れておくスタンドで、大胆なデフォルメが施されている。)
 佐藤αの新兵器がここに登場する。カシオのデジタルカメラである。現像不要で即パソコンに転送しjpeg画像に変換できる優れものである。佐藤αはこの婦警様をカメラに収め、その日のうちに山本宅のWindowsの壁紙を婦警様のタイル表示にさせたという。なお、この婦警様壁紙はFUGAクラブで通販の計画がある。
 だらだらと歩く中、落合は炭酸飲料リアルゴールドでテンションを更に高め、山本はクレーブを買って試食している。曰く、「今回のクレープは食べにくい」とのことである。
 戦場の探索を終えた一行は重大な事実に気付く。もはやバトルには欠かせなくなったじゃがバター屋の兄ちゃんがいないのである。参加者たちは一様に「あの兄ちゃんがいないとバトルに来た気にならないよ〜」と不満を洩らす。おそらく兄ちゃんには兄ちゃんの事情というものがあるのだが、戦士たちにそれを思いやる余裕などない。
 やがて日も暮れ、バトル開始間近となった。
 ここで今年のバトルのルールを説明しておこう。例年通り「口の中からなくなった」時点で手を挙げ、早かったものから順位がつく。1位に3点、2位に2点、3位に1点が与えられ、バトル終了時に合計ポイントの高かった者が優勝である。ズルは失格、フライングも失格、量を損なうほどの食べこぼしも失格であるから、参加者たちは大胆かつ慎重にならざるを得ない。かつて、クリック藤田がラムネ対決で鼻から泡を多量に噴出して失格になった例があるように、杉之原名人がマズい焼きそばを一気に頬張って身動きできなくなったように、一瞬の油断が地獄を招くのだ。

第1試合 「鶏の唐揚げ」

 カップ一杯の唐揚げ。新メニューである。佐藤αはしきりに牛串を主張していたが、他のメニューよりはシビアな判定にならないだろうと、素人の審判のための配慮がなされたらしい。意外にも美味なので来年も採用したいメニュー(種目)のひとつとされた。佐藤βが唐揚げカップを持つ戦士たちの集合写真を撮り、いよいよ準備が整った。
 「よ、よろしいですね?では行きます。」
審判もそが妙に緊張していた。そう、早食いいバトルとはそれほどに緊張感溢れるものなのだ。そして、通常では考えられないペースで唐揚げのピースが口に放り込まれる。だが、スパイスでむせぬよう、軟骨が歯に挟まらぬよう、スピーディー&ケアフリーに咀嚼される。もはや戦士たちの目はどこも見てはいない。全神経がアゴと舌に集中する。
 ………緊迫の第一試合の結果は、佐藤βが1位、落合が2位、山本が3位である。佐藤βの関西パワーが炸裂。今年は早くも熱い展開である。

第二試合 「じゃがバター」

 例年のパターンでは前試合の1位が次のメニューを決める権利がある。佐藤αはしきりに牛串を主張していたが、佐藤βはここでじゃがバターを選択。ところで、じゃがバター早食いにはひとつのセオリーがある。それは『人より早く買って崩しておく』というものである。だが、山本と廣瀬のふたりは敢えて崩さずにいた。両者は語る。

 「まだ、崩すのと崩さないのとではどちらが早いか結論が出てない。」

なるほど、言われてみればその通りである。崩すことにより冷めて食べやすくはなるが、ぼそぼそになっているため一気に食べにくくなる。勢い余ってジャガイモの破片が気管に不法侵入すれば、一回や二回の咳払いでは強制退去させられそうにない。
 しかし、今回その結論は出なかった。試合開始とほぼ同時に、祭りに興ずる若衆がどっと近くに押し寄せ、その掛け声を何かと聞き間違えた佐藤βが笑い出してしまったのである。落合は巻き込まれて吹き出した。こうなると寡黙な廣瀬が強い。また、山本は食うことに専念していて周りの状況は耳に入っていなかったという。そして佐藤αは鉄壁のマイペースである。結果的に、佐藤βから遠い順に順位がついた、1位山本、2位佐藤α、3位廣瀬である。
 後で記事にするために佐藤βに「あのかけ声、何て言っていた?」と尋ねたところ、「『ア〜ラ、エッサッサ』じゃなかった?」との答えをもらった。が、とりあえずそれは違う。

第三試合 「フラッペ」

 佐藤α・落合・廣瀬・佐藤β・山本のフラッペ戦佐藤αはめげずに牛串を推していたが、じゃがバターの後はフラッペで水分補給することとなった。
 フラッペを食べていた審判のもそに佐藤βが尋ねる。
 「ねえ、美味しい?」
 「うん。」
 「いいなあ〜………」と参加者たちの声が次々に上がる。このときもそは戸惑いを隠せなかったと後日語っている。そして例によって佐藤βが写真を撮ると準備完了。試合開始である。
 さて、例年ここで点を稼いでいた山本としては自信のある種目で点差をつけておきたいところだろう。しかし………終わってみるとなんと1位廣瀬、2位落合、3位山本である。時間測定はしていないが、おそらく入賞者は余裕で30秒を切っていたはずである。具体経験のない読者にはピンとこないかもしれないが、これは猛烈な速さである。紙コップ1杯の荒削りの氷を食べてみてほしい。もし30秒間で食べ切れたら間違いなくアナタには人の役に立たない特殊な能力がある。この点に関しては「今回は崩す時間がたくさんあったからね」と落合は語る。廣瀬は特にコメントを残していないがここでトップを取ったことは後々大きな意味を持つはずである。
 ちなみに試合後の状況であるが、やはり入賞者は路上でのたうち回っていた。やはり見慣れた光景が繰り返された。また、今回は詳しいコメントを入賞者たちから得ている。

 「左肩がすげえイテェ…」

………どなたかに科学的な解析をお願いしたい。

第4試合 「クレープ」

 佐藤αの主張は無視され、クレープである。山本がバトル開始前に試食していたクレープであるが、今年はバナナの他にパインが添えられていて食べにくいのである。結果、それを考慮して戦略を変更した落合が勝利を手中に収めた。
 例年、「クレープは先端から食うと早い」と言われ続けていたのだが、落合はクレープの形を考え、意外にも普通の食べ方をしたのである。バナナに比べて堅いパインが先端部分にあると、飲み込みにくいパインが先に口に入ることになり、嚥下するまでに時間がかかるからだ。「情報はそれを活かすことのできる人に与えてはじめて情報となる。」そんな言葉が頭をよぎる一戦であった。
 何とここで落合は山本と同点首位である。着々と実力を伸ばしてきているという噂は本当のようだ。次第に勝負の行方がわからなくなってきた。
 余談だが、このクレープ屋には「魔○の○○便」のジジを思わせる可愛らしい黒い子猫が繋がれており、道行く人になかなかの好評を博していた。しかし、見ず知らずの人間たちに触られ続けて気分を害したらしく、暫くして引っ込んでしまった。あと、おじさん。手に付いたクリームを舐めながらクレープを作るのはご勘弁願いたい。

第5試合 「ベビーカステラ」

佐藤α&β+落合 牛串ではなくベビーカステラである。このベビーカステラは今回のバトルの注目種目である。
 この愛らしい菓子が、バトルにあっては恐ろしい凶器に変容するのだ。べビーカステラはスポンジ菓子なので、口の中で水分を猛烈に奪うのである。そうかといって、うかつに水分を補給すると、今度はあっと言う間に腹が膨れてしまう。これを凶器と呼ばずして何と呼ぼう。もちろん戦士たちも何となくそういう予想をしていたのだが、いざ実際に12個を食べ終わってみると、予想を遙かに超える喉の渇きに、思いっきり水分を補給してしまった。その代償はあまりにも大きなものだった。某クイズ番組ではないが「倍率ドン!倍!さらに倍!!」というあの状況が皆の胃袋で発生したのだ。
 なお、戦略的要素の強いこの菓子を、次回より正式種目にしようという話が持ち上がっている。

第6試合 「焼きそば」

 最終種目である。佐藤αの主張は置いておいて、ベビーカステラで腹の膨れた一行を待ち受けるものは焼きそばであった。もはや慣例となっているのだが、最後はお好み焼きや焼きそばといった重たいものを食べるのである。つまり、最終戦はまさに胃袋の許容量&逞しさが鍵なのである。戦士たちにとっては地獄の責め苦以外の何物でもない。
 屋台の前に並んで焼きそばを一人ずつ購入していく。全員が一斉に「持ち帰り1個」と頼むので、屋台の兄ちゃんもさぞ迷惑したことであろう。だが甘えてはいけない。第3回大会のように総勢17人のケースに比べればアリの屁のようなもんである。
 余談だが、審判のもそも腹が減ったといって焼きそばを購入したが、「あ、お持ち帰りでお願いします」と、思わず敬語で切り出したところ、兄ちゃんは隣のお好み焼き屋と顔を見合わせて「なかなかに礼儀がよろしい」と返してきたそうである。さぞかし礼儀正しい焼きそば屋なのだろう。
 この時点で、山本10点、落合8点、廣瀬5点、佐藤α4点、佐藤β3点。この最終試合に落合がどれほどの気合いを見せるか。山本が最終戦で3位以下なら落合の優勝も有り得るのである。2人の両肩からオーラが立ち上る。果たして山本が王座を守るのか、はたまた落合が逆転勝利で新王者となるのか。また、落合が優勝した場合、彼の持ってきた賞品はどうなるのか。などとどうでもよいことを考えているうちに、いよいよ試合開始となった。ついに決戦の火ぶたは切って落とされた。
 ………やがて、沈黙の中に一本の手が上がった。勝者は………山本。そして、2位に佐藤βが入り、落合は惜しくも3位となった。これで今年のバトルも決着がついた。

 さて、バトル終了後は、祭り気分を満喫するため輪投げや射的を巡る。ところが、皆なぜかいまひとつ気合いがのってこないのだ。彼らの口から出てくるのはこんな言葉である。

 「力エルがないんだよなぁ。」

 「ケ○ケ○ケ○ッピはそそらないなあ。」

 「去年あったみたいなセクシーな力エルは?」

 杉之原名人の影響をまともに受けた者たちがここに5人。もはや輪投げや射的はカエルゲットのためだけのもののようである。結局、彼らは本日の宿泊先である山本宅に手ぶらで向かうこととなった。いや、不景気なお話で実に申し訳ない。これもすべてカエルがいないせいである。
 なお、胃袋の踊る帰りの車内での話題がどんな方向に発展していったか、それは賢明なる読者の想像にお任せしたい。………いや、任せっぱなしでは無責任なのでやっぱり明白にしておこう。ゲロである。

 総合順位については別表を参照していただきたい。接戦の末、山本が4回に渡って王座を守り通したことになった。だが、落合の成績を見ると来年こそはわからない………まだまだ早食いバトルは面白くなりそうである。ちなみに、山本は今年の10月には風雅システムの社員となるため、来年からは順位に含まれないディフェンダー扱いの可能性が高い。とんだ勝ち逃げ野郎である。道で出会ったら彼の苦手な「鱈の白子」を投げてやろう。

非公認・おわら風の盆早食いバトル得点順位表
廣瀬
佐藤β
佐藤α
落合
山本
鶏唐揚げ
3
2
1
じゃがバター
1
2
3
フラッペ
3
2
1
クレープ
1
3
2
ベビーカステラ
2
1
3
焼きそば
2
1
3
合計
5
5
4
9
13
順位
3
3
5
2
1

written by Yamamoto R
corrected and dramatized by Suginohara-Meijin


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