桜田門
私は警察にはあまり良い感情を持っていない。
以前にT・風牙賊氏宅で討論会を行ったことがあった。論議も白熱し、雰囲気もかなり盛り上がっていた。やがて夜も更け、討論は終了。友人を駅まで送るため、私は車に乗り込んだ。
三人を後部座席に乗せ、運転席のドアを閉めようとすると、いきなりドアに足をはさむ男があらわれた。目つきの悪い、チンピラ風の男である。『しまった!からまれた!』と思ったがもう遅い。男は何やら手帳のようなものを開いてヒラヒラさせながら「おいっ、こんなことしていいと思ってんのかぁ?えぇ?」と言いながら私の頬を手の甲でパチパチたたいてきた。『そういえば今日はこの町の祭の日。酔っぱらいか?』私はこのガラの悪い酔っぱらいを程よく追い払おうと試みた。「おっさん、酔っぱらってんの?僕たちは急いでんの!」この切り返しには男もたじろんだ。「おっ、お、おっさん?………私は警察官だ!これが見えないのか!」 『え?』………そう、私服の警官が飲酒運転の取締を行っていたのである。当然私たちは一滴の酒も飲んでいない。『なぜ?』男は続けた。「おい、酒飲んで運転してもいいのかって聞いてんだよ!」 さすがにムッときた。「失礼ですね。我々は酒など飲んでません。だいたい私は酒が飲めないんですから。」これには警官もムッときたらしく、声を荒げてさらに続けた「本当かぁ〜?そうは見えないぞ!」そう、我々は暖かい部屋の中で大勢で白熱の論議をしていたため、顔が紅潮し陽気になっていたのである。私はやっと事の次第を理解した。「なぁ〜るほど………でも本当に私たちは飲んでませんよ。私たちから少しでもお酒の臭いがしますか?えぇ?」私もかなり頭にきていた。酔っぱらいと間違われて頬をはたかれ、詫びのひとつもないのでは当然である。相手の神経を逆なでするように言ったのである。だが、警官もすでに後に退けなくなっていた。おそらくは我々が素面であったことはわかっていただろうが、酔っぱらいと決め込んで説教をたれ始めたのである。………最低である。己の立場をよいことに一般市民をいじめているのであるから。警官が全員そうだとは思わないが、このような仕打ちを受けると全体の印象も悪くなる。己の非を素直に認めることをはばかる必要はないと、お釈迦様もおっしゃっているのだから。