|
|||||||||||
|
|||||||||||
平成三年九月二日午後九時、再び闘いの火蓋は切られた。昨年の参加者を遥かに上回る総勢14名(うち女子4名)が戦場へと赴いた。 昨年は杉之原名人宅から会場までを徒歩で移動したため、帰途でMAX大村が弱音を吐きまくるという事態が発生した。事態を重く見たバトル実行委員会は、今年は途中まで自動車で移動することに決定。裏道走行と路上駐車という裏技を駆使して、歩行距離の短縮を図った。 メンバーの紹介をしておこう。まず、このバトルには欠かせない安芸出とMAX大村。安芸は仕事をキャンセルしての出場である。昨年よりもさらに体重の増えた安芸に細身のMAX大村がどのような策で対抗するかが注目されている。次に風雅クラブ代表の山本礼貴。明日の午前九時には東京で仕事があるにもかかわらず参戦。その根性が安芸&大村にどれだけ通用するかが見物である。そして開発部から杉之原名人といもくん、およびT・風牙賊とY・風牙賊。三十路がどれだけヤングパワーについていけるかも気になるところである。さらにヤングといえば、先日MSXマガジンの自作RPGコンテストで『グラフィックだけはダントツの一位』と評されたくりっく藤田。高校生パワーも油断できない。さらに女の子もいる。風雅の准社員アルバイターのたまちゃん(19)とよーこちゃん(18)。彼女たちを過酷なバトルに参加させるわけにもいかないので、今回は応援にまわってもらった。あとは中堅どころとして、Y・風牙賊の恋人のナース美香。その名のとおり現役の看護婦である。備えあれば憂いなし。非情なバトルに病人はつきものである。さらに杉之原名人の弟のコックM。一流フランス料理レストランのストーブ前である。ちょくちょく風雅にやってきてスパゲッティなどを作ってくれる。その味は感動ものである。ちなみにデバッグも手伝ってくれるというありがたい存在である。そして今回スコアラー兼審判をつとめてくれたのが杉之原名人夫人のるーである。その鋭い勘と判断力はコンマ一秒の差も見逃さない。 今回のバトルは前回と異なり、一対一のタイマン制ではなく四名以上が同時に参加するポイント制を導入した。一位が3点、二位が2点、三位が1点、四位以下が0点である。全8回戦を闘い、合計ポイントの高い者が優勝である。 基本的には男子全員参加なのであるが、最初から己が勝機は万に一つもないと判断したY・風牙賊はバトルを棄権してしまった。猾い奴である。まあ、いもくんやT・風牙賊も一種目しか出場していないので彼だけを責めることはできないが………(恋人の前で壮絶な食いざまを見せたくなかったのだろう) 第一回戦の開始である。種目は『フレンチドッグ』。勝負は食べる前から始まっていた。そう、大きさや温度などが手ごろなものを選ばねばならないのである。屋台のおやじに理由を説明して選択の自由を得る。さんざん引っかき回した末、各自のフレンチドッグが決定した。おやじは怪しげにのぞき込んでいる。 「はじめっ!」バトルが開始された………と、思う間もなくほぼ同時に二本の手が上がった。間一髪安芸の勝利である。もちろんもう一人はMAX大村である。三位はくりっく藤田が健闘して入賞を果たした。ちなみに杉之原名人は三位が決定した時点で半分残してむせていた。やはり審判が無難な役どころのようである。 のっけから予想通りの展開になってきた。今年の勝者は安芸かMAXか、はたまた他の誰かなのか……… 息つく間もなく第二回戦である。種目は『みたらしだんご』。「次は水気のものがいい」というアスリートたちの願いも空しく、すねた杉之原名人が種目を決定した。団子が四玉で一本の串が配られた。ここのおやじは我々に興味がないようである。参加者は五名。いもくんも勇猛果敢に出場している。「まだよ、まだよ………よーい、はいっ!」………早い。またしても安芸が一番。続いてMAX。驚いたことにいもくんが三位に入賞した。とても30歳とは思えない活躍である。ちなみに初参加の山本礼貴は、その闘いのレベルの高さにあきれている。彼もそれなりに早食いには自信があったらしい。だが、これは風雅の企画なのである。常人が相手と思ったのが運のつきである。
ここで杉之原名人が屋台のあんちゃんに質問した。「どれが一番飲みやすい?」「そうねぇ〜やっぱりレモンくらいがいいんじゃない?」気さくに答えてくれた。参加者の参考になればとの思いやりであったのだろうが、MAXは「俺はストロベリーが飲みたいんだっ!」といって無視。結局、挑戦者は全員レモン以外を選択してしまった。人間、そんなもんである。 そうこうしているうちにバトルの準備が完了した。緊張の一瞬。開始の合図とともに全員の喉が鳴り始めた。さて勝者は?……MAX大村である。やはり早い。パワーアップした安芸出も結局かなわず、二位に終わった。だが今回、山本礼貴が健闘三位に入賞。先が楽しみになってきた。ちなみにMAX大村に勝利の秘訣を訊ねたところ次のように語ってくれた。「飲むんじゃないんよ、流し込むんよ。」なるほど。でも誰でも真似できることではなさそうである。 第四回戦は『五平餅』である。これは意外にも若手が活躍。くりっく藤田が一位である。なかなか高校生の意地を見せてくれる。続いて安芸出。そして三位にはコックMが入った。先の水物の影響かMAXは不調のようである。 ここで一行の中に怪しい影があったことを言っておかねばなるまい。いもくんである。彼は『わぴこちゃん』と『ぎょぴちゃん』のお面をかぶり、『ルミナスター』と呼ばれる光り物の触覚を二つ頭につけ、さらに風船を腰に巻いていたのである。道行く人が皆、彼を避けた。そこへ杉之原名人がフォローを入れた。「ほらほら、お面を後頭部につけて……これがほんとの『オーメン』なんちゃってね。」杉之原名人はペナルティーを課せられた。 気を取り直して第五回戦。これも恒例『焼き鳥』である。ただし、今年は「ねぎま」である。一人三本勝負。………やはり安芸が早い。MAXは三位である。では二位は?……礼貴である。初めて礼貴が二位の座を奪い取った。ちなみにビリは杉之原名人。嫁さんにも情けながられていた。「食べ物は味わって食べるもんだいっ!」っといっても、いまいち説得力がない。 『フラッペ』。第六回戦は日本でいうところの『かき氷』である。これも水物の仲間であるため、MAXの動きが見物である。各自好みのシロップをかけ、準備に余念がない。食べやすいようにあらかじめくずしておくのである。安芸がせっせとかき混ぜる。 「はじめっ!」一斉に口の中にかき込む。が、その冷たさは尋常ではない。いくら飲み込もうとしても、冷たさが口内を満たし、それを許さないのである。だが………「はい!」手が上がった。MAX大村である。異常に早い。みんなあっけにとられてしまった。なにしろ二位の礼貴の半分の時間でかき込んでしまったのであるから。しかし、それは大きな犠牲の上に成り立っていたのである。食べ終わったMAXは襲い来る喉と頭の激痛と闘わねばならなかったのだ。道行く人の間を縫い、もんどりをうってのたうちまわるMAX。非常に恥ずかしい。だが、真剣に苦しいようだ。彼はドリンクと同様に氷を胃に流し込んだのである。「こっ、ここでポイントを稼いでおかねば……」壮絶な勝利への執念であった。ちなみに三位にはコックMが入ったが、その食べっぷりは痛々しく、見る者の同情を買わずにはいられなかった。安芸は早々にあきらめて味わって食べていた。このへんのインサイドワークのうまさはさすがである。 第七回戦はついに登場『クレープ』である。昨年は安芸が圧勝している。MAX大村が今年はどのような作戦で挑むのか……棄権である。フラッペの後遺症がひどく、バトル続行不可能のようである。MAX大村はここで優勝の夢を捨てた。 今年もクレープ屋の主はお姉さんである。事の次第を聞くと興味津々で試合を見守っていた。またしても勝負は一瞬にして決着した。安芸出の圧勝である。礼貴はまたしても二位に終わった。これで三回連続の二位である。三位にはくりっく藤田が入った。 闊歩する一行の前に『輪投げ』の屋台が現れた。昨年は安芸が蛙を取り、賞金千円を獲得している。すると、うまい具合にまたまた蛙が四角い台の上に乗っているではないか。当然、安芸とMAX、そして礼貴が挑戦した。が、今度の蛙はでかい。頭さえもなかなか通らない。MAXは短気を起こして残り四本を蛙に叩きつけた。おどろく屋台のおばさん。安芸も残り四本である。が、去年さながら輪がストンと下まで下りた。千円をはたいて安芸が蛙をものにした。だが、杉之原名人はすでにその蛙を持っていたため、賞金は出なかった。
しかし、闘いは容赦なく続行された。やがて一人の手が上がった。礼貴である。ついに彼は最終戦にして一位の座を我が手にしたのである。彼の目から一筋の熱いものが流れたかどうかは知らない。 最終決着はついた。各自のポイントは次の通りである。 《総合ポイント》 やはり安芸出は強い。これはどうしようもない。注目すべきは礼貴が後半頑張りを見せ、三位に入ったことであろう。残り二戦を棄権しても二位に入るMAX大村の底力も恐ろしい。 今年も狂乱のバトルロイヤルは終了した。男たちは額に汗、口にゲロして闘い、女たちはそれを呆れて見守った。年に一度のはめをはずしたイベントは午後11時過ぎにその幕を下ろした。 |
|||||||||||
|
|||||||||||
|
|||||||||||
|
|||||||||||